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4. 失体感症尺度(STSS)解説

 失体感症尺度(shitsu-taikansho-scale, STSS)は、失体感症を評価するための自己記入式質問紙法で、2012年、有村達之、岡孝和、松下智子の3人によって作られました。

(1)体感同定困難 (difficulty of identifying bodily feelings, DIB)、
(2)過剰適応 (over-adaptation, OA)、
(3)体感に基づく健康管理の欠如 (Lack of health management based on bodily feelings, LHM)
の3つのサブスケールから構成されます。それぞれの質問は、まったくあてはまらない、あまりあてはまらない、どちらともいえない、ややあてはまる、とてもあてはまる、の5段階のリッカート尺度を用いて評価し、16個の順項目では、それぞれ1点から5点を、7個の逆転項目(質問項目番号が2,4,8,9,11,16,21番)では、5点から1点を与えます。

解説:
(1)体感同定困難は、空腹感などの生体の恒常性を維持するために必要な感覚、緊張感や疲労感などの外部環境への適応過程で生じる警告信号、ゆったりした感覚などアロスタティックロード予防のために必要な感覚に気づかない傾向を問う質問です。1, 5, 6, 10, 12, 14, 15, 18, 19の9つの順項目からなり、総合大学学生の平均点±標準偏差は18.1 ± 5.6点です。
(2)過剰適応は、休息欲求、発熱、疲労感、眠気、体調不良などを感じているものの、外部環境への適応、社会的要請に応えることなどを優先するため、結果として警告信号としての体感を無視する傾向を問う質問です。3, 7, 13, 17, 20, 22の6つの順項目からなり、平均点は14.2 ± 4.5点です。
(3) 体感にもとづく健康管理の欠如では、リラクセーション反応が生じる身体的状況における身体的感覚、身体感覚日頃の体調管理の習慣を問う質問から構成されている。2, 4, 8, 9, 11, 16, 21, 23の8項目からなり、23のみが順項目であり、他は逆転項目です。平均点は21.4 ± 3.8点です。
STSS総得点の平均点は56.3 ± 10.2点(満点は115点)です。
失体感症は心身症患者によく見られる特徴とされています。心身症の研究のために、ご自由にダウンロードしてご使用ください。

参照:岡孝和:失体感症と失体感症尺度. 日本心療内科学会誌23(2019)5-9.

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